10年ぶりのNew Balance

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インドでドゥルパド修行中の想くんが
夏休みで一時帰国して関西まで遊びに来てくれた。

去年初めて彼のドゥルパドを聴いて以来インド古典にはまってしまった。

今は月に数本のライブに行き、
ついにはタブラを叩き始めてしまっている。

何に出会うかで想像だにしなかったことが起こる。
人生分かったものじゃない。

今回はちょうど10年前にカシュガルで出会った時に履いていたNew Balance
を履いて来てくれた。

カシュガルの時点で20年ものという超レアもののNew Balanceは
30年ものとしてぼくの前に現れた。

旅でNew Balance好きの欧米人が想くんの足下を見て驚愕するほどのレアものらしいが
そんなことが分からないぼくは彼の物持ちのよさに驚愕するばかりだ。

日本に帰国して数年後みんなで再会した。

みんな旅で使っていた鞄とか当時の装備を何かしら身に付けていて
相変わらずだねえなんて言い合った。

ぼくはみんなから使い易そうだなと
評判だったショルダーバックはカシュガル以降も
大切に使い続けたのだが遂に崩壊してしまい捨ててしまった。

変わらない想くんと変わらない靴。
デジャヴ効果は抜群だった。

平日しか時間が合わず慌ただしかったが
十二分に楽しませてくれた。

翌日、
駅まで想くんを送って仕事に出かけた。

もう梅雨明けなのかと思わせる夏空の下、
自転車を走らせる。
踏切で停車する。
列車が通過する。
想くんが車内から手を振る。
風を巻き上げ爽やかに列車は去る。

今は身を置けない世界が遠ざかって行く気がした。

このまま時間が経てば経つほど記憶の彼方に
カシュガルの日々が霞んでしまうのではないかと時々不安になる。
でもこうして会えることで確かに有ったことなんだと確認できる。

変化はしているけど、
確かにあの時の自分の積み重ねに今の自分は居る。