お盆の時期には北アルプス遠征、というのがずっと恒例だったが今年はあまりの暑さに怯んで行けなかった。10年ぐらい前の写真を見返していると、お盆休みに北アルプスに向かう直前に大阪駅で撮った写真があってぼくは長袖を着ていた。
今では考えらないし、気候変動の進行具合を改めて実感する。
9月に入れば涼しくなるだろうと思っていたけど、結局中旬過ぎても涼しくならず、行かずに終わるのは寂しいので9月22日(日)から山に入るセッティングをした。
行き先は黒部五郎岳。折立から入り新穂高に抜ける10年前にソロで縦走したコースだ。妻はなんと25年ぶり!
9月21日(土)のお昼過ぎに富山着。北陸新幹線が敦賀に延伸以来初めて乗るが少し早くなった気がする。ホテルにチェックインして富山市内を散策して夜は寿司を食べるというかなり余裕のある登山前夜を過ごした。
DAY1 9/22 折立→太郎平小屋
6時20分富山発折立行きのバスの乗客は我々を含めて6名だった。今日の天気は荒れ模様だ。
折立に着いた瞬間から結構な風と雨。8時40分、今日は小屋を予約しているので気持ち的に余裕を持って出発。
1時間ほどでクマの目撃情報が絶えないアラレちゃんに到着。以前は朽ちかけていたアラレちゃんが小ぶりながらも立派な額装に変わっていた。
雨は小降りになったり激しくなったりで、トレイルは沢状態に。
樹林帯を抜けていよいよ折立街道のメインセクションが始まる。幸いにも風は少し収まっている。
以前からの改修が終わったようでとてもきれいで登りやすいトレイルが続く。
まだ全体的に秋の気配をそれほど感じないのだが、目を凝らすと足元に小さい秋を見つけることができる。
12時47分、小屋が見えてきた。
以前までの秋ならこの天候の中を歩くと体を冷やして危険な状態になることも考えられるが寒さはなく、ここにも気候変動を感じる。吹き込みで全身びしょ濡れなのでこれがテント泊だと夜には寒さで震えていたかもしれない。
太郎平小屋に着いて乾燥室に濡れた装備を干して食堂でお昼ご飯をいただく。
25年前に泊まった部屋と同じかもしれないと妻は言っている。
12時にあがるはずの雨は夕方まで降り続けた。
DAY2 9/23 太郎平小屋→黒部五郎小舎
2日目は快晴、黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳が見える。
6時20分、まぶしさの中ハイクスタート。
昨日の雨が嘘のようなきらきらと輝く景色の中を歩く。
まずは北ノ俣岳を目指す。日が登っても夏のように急に暑くなることはなく涼しく快適に歩いていく。
8時37分、北ノ俣岳着。
ここからは前方に笠ヶ岳を見ながらの本格的な稜線歩きが始まる。
広く安定した稜線が続く。まるで夢の中を歩いているような気分になってくる。一歩一歩進むごとに目の前の景色は変化し、別れを告げなければならない。
噛み締めるように歩いていると黒部五郎岳が近づいてきた。10年も経つと記憶は曖昧で初めて見る景色のような気がする。
11時半、黒部五郎岳に取り付く。今日一番の登りが続く。
時折、歩いてきた稜線を振り返る。
12時25分、黒部五郎岳ピーク着。
これから歩くカールを見下ろす。
カールへは一気に下る。
下るに従ってカールにガスが満ちてくる。
下り切ってカールを見上げる。ひとりでここを歩いた時はこの景色にぞくぞくとして恐かったのを思い出した。
25年前は稜線コースを歩いた妻はカールは初めてで、すごいすごいと興奮している。
カールからはちょうど真横に雲ノ平が見える。
ナナカマドの実、秋を感じる。
カールには巨岩がゴロゴロとしている。
水不足の山域が多い中、ここはとても水が豊富だ。
カールを先へと進むとぐっと秋の気配が深まった。
カールに入ってから約2時間、ようやく黒部五郎小舎が近づいてきた。
14時51分、”三角屋根”の黒部五郎小舎に着いた。
山深くとても静かなところだ。
目の前に小屋が見える場所に幕営。
テントは全部で4張り、とても静かだ。
静かな中、テントから暮れゆく景色を眺めながら夕食にする。
DAY3 9/24 黒部五郎小舎→双六小屋
翌日も快晴、6時半出発。ただぼんやりと、ずっとここに流れる時間に浸っていたい気分を振り切り、名残惜しみつつ歩き始めた。
三俣に向けて少し登ると薬師岳がきれいに見えた。昨日より快晴だ。
三俣蓮華岳の手前、鳴き声がしたので見ると雷鳥一家が居た。
9時13分、三俣蓮華岳ピーク着。ここはいつ来てもガスっていて晴れの時に来るのは初めてだ。
三俣山荘、鷲羽岳、水晶岳と見える。
そしていつもは巻いていた双六岳へ向かう。
途中、黒部五郎小舎で作ってもらったお弁当をいただく。
双六岳が迫ってきた。この稜線も景色の変化が目まぐるしく歩きごたえがあった。
11時7分、双六岳ピーク着。
本当はこの先に槍ヶ岳が見えるのだが残念ながらきれいに隠れている。
13時50分、双六小屋着。黒部五郎小舎に比べると都会に来た気分になる。
以前お盆に来た時はすごい混雑でトイレも40分ほど並んだのだが今日は空いている。
夕方、小屋前から鷲羽方面を眺めると雲がたくさん湧いてダイナミックな景色が広がっていた。いよいよ明日でこの縦走も終わるのかと思うと寂しくもなり、歩き通せそうな予感にはほっとした気分にもなった。
DAY4 9/25 双六小屋→新穂高
5時、双六小屋出発。
明るくなるに従って景色は目まぐるしく変化する。足を止めつつゆっくり歩く。
前方に焼岳、その先には乗鞍岳が見える。
7時、鏡平着。
山は下りが本当の核心部ではないかと思う。膝を痛めやすいし、単調で集中力が切れると危険なのでこまめに休憩をとりつつ慎重に下る。
山に入っている間に少し涼しくなったみたいで標高を落としてもそれほど暑くない。
下山後は新穂高で温泉に入って4日分の汗を流し、高山に出てご褒美のそばをいただくという至福の時間を過ごす。
それぞれ25年ぶり、10年ぶりの縦走コース、色々なことを思い出しつつ歩いた。
体力的には以前の様にはうまくいかないこともあったり、逆に経験からうまくいくこともあったり、自然は変動し、そして自分たちも変動しつつうまく合わせていくとまだまだ歩けるのだと自信を深めた縦走だった。
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