2年前に雨で撤退して登れなかった鹿島槍ヶ岳に再度挑戦してきた。今回はソロで鹿島槍ヶ岳の更に先、八峰キレットを越えて五竜岳まで縦走してきた。
仕事を終えて新幹線で名古屋まで、更に中央本線のワイドビューしなので松本まで、そして在来線に乗り換えて大糸線を北上して23時過ぎに信濃大町に着いた。何度かお世話になっている駅から徒歩3分の宿に前泊した。
DAY1 9/27 扇沢→冷池テント場
6時15分発のバスで扇沢まで。信濃大町駅前から以前は鹿島槍ヶ岳が綺麗に見えていたのに、新しい建物が建っていてぎりぎり頂上辺りが見える程度になっていた。
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7時前、扇沢着。駐車場はほぼ満車、黒部を目指すチケット売り場は長蛇の列だった。水を汲んで柏原新道を目指す。
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黒部方面に比べて人の気配がない。登山届けを出して7時15分、ハイクスタート。
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柏原新道は完璧に整備されていて歩きやすい。歩幅を小さくして一定のペースで登っていく。
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日差しに当たると暑いが、樹林帯の日陰の中は涼しく快適に登って行く。登ってくる人わわずかだが下りてくる人と頻繁にすれ違う。下山中の人はほとんどの人が立ち止まって道を譲ってくれた。後立山連峰は玄人好みの山なんだと思った。
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8時、扇沢が小さく見えるところまで登ってきた。正面奥に針ノ木岳が見える。
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相変わらず日陰が続き快適に登っていく。
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快適ではあるが単調な登りでもあるので時折立ち止まって左手を眺めて風景の変化を楽しむ。
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紅葉は盛りには少し早かったみたいだ。でも、登ると色づきが濃くなってきた。
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10時、種池山荘着。小屋前で何人か休んでいて、名物の石釜焼きピザをオーダーしていた。行動食とスコーンを食べて30分ほど休憩した。
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ここから稜線歩きが始まる。爺ヶ岳を目指す。日差しが思ったよりも強くて暑い。
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少し歩いて振り返れば種池山荘と剱岳が見える。
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そして進む方向の彼方には鹿島槍ヶ岳も見える。
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前方の爺ヶ岳への登りは緩やかにも長い登りなのだが、息切れもなく頭痛もなく快適に歩いていく。一歩一歩、山登りの楽しさを噛み締めて歩いていく、最高の時間が訪れた。
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登りながら何度も振り返って見ても剱岳は見飽きない。
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11時10分、爺ヶ岳南峰着。鹿島槍ヶ岳までの稜線と手前の冷池山荘が見える。
今回のバックパックはMYOGのYAMABU R1 テスト版だ。容量は約40リットル、パッキングウェイトは全部込みで約10kgだ。
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大町の町並みがくっきりと見える。
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続いて爺ヶ岳中峰へと向かう。
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2年前は雨の中この手前ぐらいまできたところで引き返したのだった。
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11時33分、爺ヶ岳中峰着。
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西側には剱岳から北方稜線全景。
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冷池のテント場がかすかに見える。稜線に出てから強い日差しに当たっていたので流石に疲れを感じてきた。
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歩くたびに鹿島槍ヶ岳の姿が間近に迫ってくる。
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小屋の手前は一旦樹林帯まで下って、登り返す。
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12時半、冷池山荘着。すごく綺麗な小屋だった。
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テント泊の受付をして、ビールを買ってトイレを済ませてからテント場へと向かう。テント場は小屋から10分程登ったところにある。
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フラットな所はすでに埋まっていて、微妙に斜めな所しか空いていなかった。
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稜線にあるテント場なので、風があると怖いが眺めは最高だ。目の前に剱岳がある。
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日陰がないので直射日光を浴びてかなり暑かった。テントに入って昼寝しようにも中はさらに暑いので、なるべく出口の日陰になる所に横になると、1時間ほど熟睡できた。
今回はマットをクローズドセルマットから久しぶりにエアマットに変えてみた。
クローズドセルマットをぐるりと巻いてバックパックの中に仕込む方法だと、R1の場合どうしても容量が減ってパッキングがギリギリになってしまう。エアマットにすると余裕が出来てまだまだ入りそうだった。
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16時半、夕食。いつものメニューだけど今回は無印のキノコセットをトッピングしてみた。カレーの味に深みとインパクトが増してなかなかいい感じだ。
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剱岳に沈む夕日を期待していたのだが雲がかかり始めた。このテント場は電波が入るので天気予報を確認すると明日の昼ごろから雨となっていた。
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少し粘って見ていたのだが夕日はこれが精一杯だった。
明日の天候を思うと雨が降り出す前にキレットを越えたいので、3時に目覚ましをセットして18時に就寝。
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夜は暑くもなく寒くもなく快適だった。
DAY2 9/28 冷池テント場→五竜山荘テント場
今日の天気を思うとなかなかテンションが上がらず、ようやく寝袋から這い出したのは3時半ごろだった。
小屋まで下ってトイレと給水を済ませて4時10分出発。雲が厚くヘッドランプを消すと完全な闇だった。種池山荘の灯りと、劔方面にどこかの小屋の灯りが見えるだけだ。
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5時20分、布引山着。ようやく周りが青味がかってきた。縦走する人はほとんどいないのか後ろにも前にもヘッドランプの灯りはない。
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5時半を過ぎるとようやくヘッドランプなしで歩けるようになるも、霧が濃くて視界はきかない。
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先が見えないので、地形の変化で大体どこら辺を歩いているのか検討を付けながら歩く。
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5時10分、鹿島槍ヶ岳着。何も見えないし誰もいない。
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この先進むかどうか迷ったけど、雨が降る前にガスは一旦晴れるだろうと判断すると、ヘルメットを装着して北峰へと続く吊尾根に足を踏み入れた。
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今までの緩やかな稜線が一変して急峻な岩稜帯歩きになった。濡れた岩を砂がまとわりついたソールで踏むと滑るので気をつけながら歩く。
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濃いガスの中をひとりで歩いているとぞくぞくしてきた。怖くもあるが楽しくもあるという変な気分だ。
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6時40分、鹿島槍ヶ岳北峰着。バックパックは分岐にデポしてきたので5分ほどで登ることができる。
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分岐まで戻るとその先はいよいよキレットに入る。ここで初めて前方から歩いてきた人に会った。
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キレットに入っていきなりのトラバース。
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ようやくガスが少し晴れてきた。
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歩いてきた道を振り返ると大町側が結構切れ落ちているのがわかる。
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7時20分、ようやく見通しが明るくなってきた。前方からパーティーが向かってくるのが見えた。
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黒部側の渓谷も見えるようになってきた。
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剱岳もピークは雲の中だがなんとか見える。
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そして前方には八峰キレット核心部と雲に隠れた五竜岳。
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予想通りガスが晴れてテンションが上がる。キレットのテクニカルな部分を楽しみながら進んでいく。
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大町側を見れば晴れ間も見えてきた。
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さらにガスが飛んで、五竜岳が姿を表すかとしばらく立ち止まって眺めたけど結局見えなかった。
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大町側に雪渓があって紅葉とのコントラストが美しかった。
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7時40分、前方の下りきった所に小屋を目視、順調に進んでいてほっとする。
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ほぼ全景を現した五竜岳、しかしガスは綺麗に晴れず。
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キレット核心部に入った。斜面をトラバースした後、真ん中のハシゴを登って乗っ越す。この辺りから地質が変わって岩がすごく硬くなってきた。角が尖ったものが多く、素手で触ると手が切れそうに鋭い岩もある。
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ハシゴの手前の切れ落ちたルンゼ。覗き込むとどこまでも深くてぞくぞくした。
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核心部を越えると大きく下っていく。
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小屋の真上に出た。稜線に見事に乗っている。すごい所に作ったものだ。
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7時50分、八峰キレット小屋着。人の気配がなくてテレビの音だけが漏れ聞こえてくる。
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30分ほど休憩することにして少し早いけど昼食にする。
休んでいると鹿島槍ヶ岳方面から男性が一人着いて、続いて父親と小学生の男子のペアが着いた。歩き始めてからほとんど人に会うことがないので思わず話しかけてしまう。
小屋の正面に剱岳が見える。雲行きがだいぶ怪しくなってきた。
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8時40分、八峰キレット小屋出発。
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このコース、核心部と呼ばれているところは終わったが小屋から先、五竜岳までの間はなかなか気が抜けないセクションが続いた。
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相変わらず五竜岳は姿を現さない。
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今にも雨が降り出しそうになってきた。尾根沿いの細かなアップダウンがある道が続く。
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10時、北尾根の頭。久しぶりにフラットな場所に出て長めの休憩をとる。雨がぽつぽつときたのでレインウェアを着て、防水ソックスを履く。
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再びガスって先が全く見えなくなってしまった。
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ガスの中、何気に危険なセクションが続く。
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山を歩いているとガスが一気に飛ぶ瞬間がある。サーッとガスが飛んで一瞬にして目の前に紅葉の山肌が現れて雨が止んだ。
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剱岳の基部も見える。
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細かいアップダウンを繰り返しながら歩く。岩は固くてホールドはしっかりしているので、三点支持を確実にし、ムーブを楽しみながら登ったり降りたりを繰り返す。
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がれ場の急登に出くわした。足の置き場を間違えると足が沈んでザーッと流れてしまう。
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再びガスに飲まれ、ぽつぽつと雨が降ってきた。
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視界が悪いせいもあるが、この辺りが本当の核心部ではないのかと思うほどぞくぞくしてきた。
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足の置き場、ホールド、浮石、ルート、何かと考えさせられるセクションが続く。
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11時、G5通過。
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キレット小屋を越えてからの方が鎖場が多い気がする。
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白馬の稜線を彷彿とさせる所に出た。五竜岳はだいぶ近いのではないかと思う。
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久しぶり穏やかな稜線歩きを楽しんだのも束の間、明瞭すぎる稜線に出くわした。
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一番長くて難しかった鎖場。
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人の気配がしてきたので五竜岳が近いことを知る。
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ピークへは主稜線を外れていく。ガスの先にピークと人影が見える。
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12時、五竜岳ピーク着。雨が強くなり、風も出てきている。早々に後にする。
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今までとは打って変わって急に周りが賑やかになった。
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五竜岳山荘までの道のりもなかなか険しい。
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前を歩いていたツアーのガイドさんが雷鳥がいると教えてくれた。半分冬毛になっていた。
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小屋に着くまでに雨も風もますます激しくなってきた。
12時40分、五竜岳山荘着。
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テント場はまだまだ空いていた、というかこの天気で張る人は少なそうだった。
ポールを通してテントを立ち上げた瞬間、風に持っていかれそうになった。すぐに中にバックパックを放り込んで、石も大きなものを3個入れて重しにした。完全に吹きさらしなので嫌な予感しかしなかった。
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テントを張り終えると小屋で祝杯。冷池テント場を出た時は天気も悪いし、テンションがなかなか上がらず、五竜岳に着く自信がなかったのだが、今こうしてここに居る事実にこの上ない充足感を覚える。
ここに着くまでの8時間、一瞬たりとも無駄な時間は無く、全てが満ち足りていた。
小屋でチャーハンとビールをいただいて至福の時間を過ごす。
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相変わらず雨が降っていてテントに閉じ籠るしかなく、15時半頃までうとうととして、トイレに行くために外に出ると一瞬でガスが飛んで雨も止んだ。
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トイレから戻る頃には再び雨が降り、風が吹いた。
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黒部側からの風がますます強くなっていて、テントのサイドが大きく凹み出した。ガイラインのチェックをして念のために重しの石を足しておいた。
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18時、夕食を終えて、寝袋に入って上を見上げてみるとテントの凹み具合がよく分かって、大丈夫なんだろうかと?だんだん心配になってきた。
日が落ちて気温が下がると壁面に結露が始まって、水滴が風で弾かれてテント内に降り注ぎ始めた。久しぶりにエマージェンシーシートを取り出してシュラフが濡れないように養生をした。
夜になって風はますます強くなって、ゴーーーーという地鳴りがしたかと思うとテントに激しく叩きつけた。風を受けてテントは3分の1ぐらいが凹んでしまい、ポールも反対側にしなり始めた。
周りではペグを打つ音が響き出したので、僕も外に出てガイラインを確認する。降り注いだ結露がテントの隅に水たまりを作っていたので、マイクロファイバータオルで吸って排水をする。
眠れないし、出来ることはないので、ただ身を固くして凹むテントを眺めているしかなかった。その内、白馬側でもゴーーーーという音が始まり、それがくるとテントが小刻みにバサバサバサと左右に震えた。
結局12時頃まで眠れなかった。
DAY3 9/29 五竜岳山荘テント場→遠見
3時頃に目が覚めた。相変わらずテントは凹んでいるが風は少し弱まっている気がする。最終日は唐松岳まで行って八方尾根を下りる予定だったが、諦めて遠見尾根を下りることにする。
時間はあるので朝食を食べて、明るくなるまでテントで待つ。
明るくなって外に出てみると雨は霧雨になっていた。
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6時、五竜岳山荘出発。
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出てすぐに遠見尾根に入る。すごく分かりやすい尾根だった。
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尾根を下り始めると風が止まって久しぶりに山が静かになった気がした。尾根は時折鎖場があるが概ね歩きやすく快適な所だった。
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高度を下げて厚い雲を抜けると雨も止んだ。
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雲と光と紅葉、先に続く遠見尾根、さらにその先に連なる山々、素晴らしい眼前に広がっていた。
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唐松岳まで行けなかったのは心残りだったが、行っていればここは歩けなかったので結果的によかったなと思った。
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昨日歩いた稜線を見上げる。
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途中、休憩して昨日から履きっぱなしだった防水ソックスを脱ぐ。濡れたテント内でも足を濡らすことなく冷えから守ってくれた。
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遠見尾根はなだらかに長い。尾根の彼方の方まで見えるから遠見と呼ぶのだろうか?
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白馬の町が見えてきた。
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八方尾根も見える。上の方は相変わらず雲がかかっている。
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最後にもう一度昨日歩いた稜線を振り返る。鹿島槍ヶ岳は完全に雲の中、基部に見える雪渓はもしかしたらカクネ里氷河だろうか?
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素晴らしい景色を眺めながらの下りが続いた。昨晩は辛かったが、今は嘘のように心身穏やかで全てに見とれながら歩く。
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9時、白馬五竜岳スキー場アルプスだいらまで下りてきた。スキーで何度か来ているが、雪のないゲレンデは全く風景が違っていて面白い。
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アルプスだいら駅からテレキャビンでとおみ駅まで下りる。
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雪のないゲレンデをゴンドラに揺られていると無性に寂しくなった。シーズンオフのゲレンデの寂しさが、山の旅の終わりの寂しさを強調してくるようだった。
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レストハウスのエスカルプラザから遠見ゲレンデを見上げる。
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久しぶりのソロ縦走、無事帰ることを最終目標に、全てを自分で判断し、自分と向き合い、山と向き合い、好きな山を好きな山道具で歩き、感動し、想いを馳せる、こんな贅沢な遊びは他には無い。